対象疾患 (整形外科)
脊椎外科・側弯症
椎骨と椎間板が交互に重ね合わせてできた背骨の柱が脊柱と呼ばれます。
脊柱はヒトが円滑に活動するための不可欠な屋台骨であり、脊柱の変形あるいは不安定性は脊髄・馬尾神経の圧排を引き起こし、痛みを生じて歩行が困難となり、日常生活に大きな支障を生じます。その程度はがん患者、呼吸器疾患の患者より重度のQOL(生活の質)の低下が報告されております。神経障害を呈した場合、早期の手術治療が必要になります。
脊柱はヒトが円滑に活動するための不可欠な屋台骨であり、脊柱の変形あるいは不安定性は脊髄・馬尾神経の圧排を引き起こし、痛みを生じて歩行が困難となり、日常生活に大きな支障を生じます。その程度はがん患者、呼吸器疾患の患者より重度のQOL(生活の質)の低下が報告されております。神経障害を呈した場合、早期の手術治療が必要になります。
頚椎疾患
胸椎疾患
腰椎疾患
- 腰椎椎間板ヘルニアに対する多裂筋を温存したETR(Expandable tubular retractor)法による髄核摘出術。皮切は3cmと小さい(図7)。必要に応じてコンドリアーゼ(ヘルニコア®)による椎間板内酵素注入療法も行っております。
- 腰部脊柱管狭窄症に対する棘突起縦割式拡大開窓術を積極的に行っています。筋肉を骨から剥離しないので手術創の痛みも少なく、早期社会復帰も可能です。
- 腰椎(分離)すべり症に対して椎間ケージを用いた後方椎体間固定術(PLIF/TLIF)を積極的に行っております。表面がマクロ、ミクロ、ナノ構造を有した最先端のケージを国内先行使用しています(図8)。
- 骨粗鬆性椎体骨折(昔は圧迫骨折と呼称)患者が急増しています。椎体骨折患者の3分の2は明らかな転倒歴がありません。いわゆる、「いつの間にか骨折」です。高齢者の腰痛をみたら椎体骨折を疑う必要があります。ただし、椎体骨折の10%程度は安静にしていても骨が癒合しない「偽関節」に移行する場合があり、その場合放置すると椎体が圧潰して下肢麻痺になる危険性があります。椎体骨折の進行具合により経皮的椎体形成術(BKP)(図9)、椎体骨折に大きな不安定性を伴った場合はBKP+後方固定術(図10)、骨折椎体が圧潰し脊柱が硬い後弯を呈した場合は後方椎体骨切り術が必要になります(図11)。担当医はこれまでBKPに対する数多くの研究論文や執筆依頼があり、個々の椎体骨折ステージに応じた手術治療を提供することが可能です。
脊柱変形
- 小児:思春期特発性側弯症(AIS)を主に取り扱っております。AIS診療にとって最も大切なことは学校での運動器検診による早期発見と早期治療です。脊柱が側方に弯曲することを「側弯」、生理的範囲を超えた後方への弯曲を「後弯」と呼びます。側弯は第2次性徴期のピーク時、すなわち身長が最も伸びる時期(PHV: peak height velocity )前後から弯曲が進行するので弯曲の大きさと成長余力を考慮に入れた継続した診療が不可欠です。当科では側弯症専門外来(毎月第4木曜日午前)を設け、側弯症患者さんの診療を積極的に行っており、県内には3つしかない側弯検診後の3次医療機関(経過観察・装具治療・手術治療)のうちの一つです。装具治療が無効な成長終了後も側弯が進行すると考えられる場合は変形矯正固定術を行っております(図12)。
- 成人:腰椎変性(後)側弯症、所謂、高齢者の腰曲がり、成人脊柱変形です。加齢に伴い腰痛の前弯化が消失し、骨盤や胸椎での代償範囲を超えた場合、立位保持が困難となり多くは前方に倒れるような姿勢となります。フランスの整形外科医 Jean Dubousset が提唱した“Cone of economy”という概念に従えばヒトの立位保持を円錐に見立てて円錐から外れる姿勢は立位保持に多大なエネルギーが必要となり、ついには支えが必要となります。軽度な場合であれば背筋訓練等のリハビリ治療が可能ですが高度になりますと立位歩行再獲得のために手術治療が必要になります(図13)。
- 担当医は日本脊椎脊髄病学会が認定した「脊髄モニタリング認定医」を取得し、AISやASDをはじめとした脊髄障害のリスクの高い症例には全例で脊髄モニタリング(Tc-MEP)を用いて術中の神経合併症(下肢麻痺)の予防に努めております。
関節外科
変形性膝関節症
- 軽度:鏡視下手術:内視鏡を使用した手術で、傷跡も小さく入院も1~2週と短いのが利点。
- 中等度:高位脛骨骨切り術:骨切りによりO脚を矯正し、吸収性人工骨を移植することにより骨移植が不要。術後も半数以上で正座が可能です(図14)。 *内側の半月板や軟骨が磨り減ると、膝はO脚になります。これを、健常な外側で体重を支えるように骨を切る手術を高位脛骨骨切り術といいます。すなわち、O脚変形を矯正して幾分X脚にする手術です。この際、足が短くならないようにするのと、骨盤から骨を採取しなくてすむようにするため、吸収性人工骨β-TCPを用いた手術法(約1.5時間)を当院で開発しております。
- 重度:人工膝関節置換術(図15、図16、図17、図18、図19):痛みをとるとともに膝の変形も矯正可能で、自転車に乗ることはできますが、正座はできません。変形の程度や骨欠損に応じて数種類の人工関節があります。